昔の綺麗な谷津田を目指して

「自然栽培の野菜は腐らない」そんな突拍子もない話を聞いたのは約10年前、私がフードビジネスコーディネータースクールに通っていたとき、講師できてくださった(株)ナチュラルハーモニーの代表の河名秀郎先生からでした。

自然栽培は農薬も肥料も一切使用しません。農薬を使用しないと虫がたくさん来て穴だらけの野菜になるイメージが強かったですが、河名先生によると自然栽培の野菜は虫に食べられることもなく、形もとてもきれいな野菜ができるというのです。さらに長年続けていくとその植物の土地のような状態ができ、雑草なども生えなくなるというのです。

信じられないような話ですが、たくさんの自然栽培実践者を見てきた河名先生は実際にその目で見てきています。

肥料や農薬は使わず、綺麗なとてもおいしい野菜ができて、雑草も生えなくて環境にも優しい、こんないいことずくめ栽培方法をなんでもっとたくさんの人が実践しないのだろうか?そう思い、まずは自分が実践してみようと思いました。

無肥料、無農薬栽培には自然農と自然栽培と呼ばれているものがあります。自然農は耕さず、自然栽培は耕す、というのが大きな違いです。また、営農している方が多いのは自然栽培の方です。

どちらも学んでみたくて、四街道の自然農塾と富里の「里山と田んぼの学校」に行きました。

1年間自然農と自然栽培を学ぶと今度はもっと家から近くて広い場所で田んぼをやってみたいと思いました。自然栽培では今まで使われてきた肥料の層を「毒肥」と呼び、その肥料を抜くことから始まります。麦を植えて麦に吸わせるなどして抜くのですが、肥料を抜くのに5年はかかると言われています。それならば長年使われていなかった場所を探そう、と思いました。当時母が市民大学に通っていて、そこで佐倉は湧き水が豊富という話を聞いてきて、湧き水マップがあることも知りました。

その湧き水マップを見ながら土地探しをしていたら小篠塚でピッタリの谷津田を見つけました。そしてその時にユンボのプロフェッショナルの大野さんにも出会い、地主さんと大野さんに開墾を一緒に手伝っていただけるようになりました。

1年間その場所で米作りをしましたが、その場所は水が多く、お米よりも蓮根が向いている気がして、レンコンを植えてみたいと思い、研修先の社長と出会い、本気で蓮根農家になるなら本気で教えてやる!と言われ、本気で蓮根農家になることを決意しました。

農家になるためには5反必要です。小篠塚の谷津田は使っている方はなく、すべての場所が荒れていました。最初に借りた地主さんの土地は一番最後まで使われていてそこまで荒れていなかったのですが、3反弱ぐらいしかありませんでした。1.5反ぐらいづつ2カ所に分かれていて、その間に2人の別の地主さんの土地がありました。その土地も元は田んぼだったようですが、その時には直径20cm~60㎝の木が何本も生えてしまっていて、しの竹は3~4mぐらいにも高く成長して密集していて、テレビなどが捨てられていたり、ごみもたくさんありました。

どうしたらそんな場所を田んぼにできるのか、私には全く想像もできなかったのですが、大野さんは耕地整備もたくさん経験してきた方で、境界さえ気にしなくてよければ簡単だよ!と言ってくれました。どのようにするのか話を聞いてもやっぱり私にはまったく想像もできなかったのですが、蓮の花が一面に咲いたこの場所を見てみたい!と思いました。

境界を気にせずに・・ということは私がその3人から土地を購入してしまえば問題ありません。1人は最初に出会った地主さんでとても協力的です。購入しても借りてもどちらでも大丈夫だよ、と言ってくださいました。もう一人の方はぜひ購入してほしいと言ってくださいました。もう一人の方は売ることはできないけど、今後耕作する気はないので、もしもの時は面積で返してくれたらいいよ、と言ってくださいました。

皆さんのおかげて5反の田んぼのメドが立ちました。

蓮根農家で1年の研修をへて、4月には種植をするため、2月から猛スピードで開墾をしました。

木を切って、抜いて、2m~4mのしの竹ゾーンは刈払い機で刈って運んで、土の上に生えているものをどかしたら今度はレベルで地面の高さを見ながら一番低い場所に合わせて土を取って、取った土で土のうを作って土がこぼれないように並べ、その並べたところに土を盛って道を作りました。

水が多いところはユンボが潜ってしまうので大きな丸太にユンボをのせて少しづつ移動します。そういった場所は道にするにも丸太を敷いて土もたくさん使って、車が通れるような道を作りました。私は少しでも広く田んぼにしたかったのですが、道がないと作業がしにくい、とのアドバイスの通り広い道のある使いやすい田んぼになり、感謝しています。

何とか、4月5月で種植をすることができ、8月には荒れていた野山が蓮の花が一面に咲く美しい蓮田になりました。カメラマンの方も毎朝のように来て素晴らしい場所と喜んでシャッターを押していました。

蓮田にはたくさんの生き物が来ます。カエル、オタマジャクシはもちろん、メダカ、ゲンゴロウ、ドジョウ・・・トンボや蝶も珍しい種類がいます。夏にはホタルも見られます。それらを食べる鳥もきて、多種多様な生き物、植物がいて循環されています。

この谷津田のまわりはまだまだ荒れています。私は今後もこの荒れた谷津田を蓮田に変身させたいと思っていますが、なかなかうまくいきません。

それは地主さんとの交渉です。もう何年も使われていなく、当時田んぼをしていた方はもう亡くなっていたり、相続がされていなかったりします。境界がどこなのかを知らない方も多いです。他にも昔の狭い田んぼのままだったりすると地権者が1反の中に10人以上もいたりして、交渉しきれなかったりします。

市内にはそういった場所がたくさんありそうです。地権者が分からなくなったような場所は国が管理するなど農業で使いやすくなるよう、法律を変えてほしいと思っています。

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